納豆作りの手順
「納豆作り」は、次のような手順ですすめましょう。
その1.大豆を用意します
虫食いなどのない粒のそろった大豆を用います。好みにもよりますが、小粒大豆の方が理想的です。100グラムの大豆から200グラム強の納豆ができることを頭に入れておきます。
その2.大豆を水でよく洗浄します
大豆にはドロや雑菌などが付着している場合がありますから、ゴシゴシと米を研ぐ要領でよく洗います。
その3.水に浸します
洗ったら、大豆の量の三倍の水に浸し、十分に水を吸収させます。
夏は10時間くらいで、それ以外は20時間前後。水に浸した大豆は3倍くらいの大きさになります。
その4.大豆を煮ます
浸した水をそのまま使用し、水に溶けだした栄養分をもういちど煮豆の中に吸収させます。煮立つまでは強火にし、あとは、とろ火でゆっくりと煮上げます。4.5時間でやわらかくなりますが、美味しい納豆に仕上げるコツは、親指と小指で煮豆をはさんでつぶれるくらいのやわらかさに煮上げることです。
その5.納豆菌の接種の仕方
いよいよ納豆の仕込みですが、むずかしくはありません。煮豆に納豆菌を接種する方法には、次の三通りがあります。
A |
市販されている納豆をタネにする方法
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B |
納豆菌(白い粉末状)を購入して煮豆にかける方法
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C. |
稲ワラに付着している納豆菌を用いる方法
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いちばん手軽なのはAの方法で、この場合は、製造日付の新しい納豆を選び、煮豆200グラム(原料大豆100グラムで、これくらいになります)に対して、市販の納豆を大さじ山盛り1杯の割合で混ぜたものをタネにして発酵させます。納豆菌が入手できれば、Bの方法がもっとも成功率が高いでしょう。最近では、薬局や薬屋さんなどでも納豆菌を置いている場合が多くなっています。粉末の納豆菌を湯ざまし、あるいは大豆の煮汁で溶き、煮豆にかけます。Cは伝統的な作り方で、ワラで竜を作り、その中に煮豆を詰め、ワラに掛んでいる納豆菌をタネとして発酵させます。日本産の稲ワラ一本には、だいたい1000万個の納豆菌が付着しており、これを上手に使用して納豆を作るわけです。
その6.タネは手早く混ぜます
納豆菌を混ぜる作業は、A、B、Cのいずれの場合でも、煮豆の熱いうち(摂氏80度くらい)に発酵用の容器の中で手早くするのがコツです。冬場など煮豆が冷えてしまうとうまくいかない場合があるので注意しなければなりません。
その7.容器のえらび方
発酵用の容器は、重箱や弁当箱、ポリ容器、ふたつきの陶器など何でも利用できますが、手軽で熱湯消毒が可能という点で、ふたつきのポリ容器(なるべく耐熱性のもの)が便利です。ふたは完全密封せず、ふたの角に割り箸一本をはさんで通気孔を作っておきます。
その8.発酵中の温度管理
納豆菌を混ぜたら、容器は清潔なタオルなどで包み、摂氏40度から42度くらいの温度でほぼ20時間ほどねかせると、納豆になります。
その9.保温器具
身近にあるものを活用しよう
湯タンポや電気ゴタツ、電気アンカ、さらには風呂の湯なども活用できます。
その10.納豆のでき上がり
発酵容器が最後まで熱を保持していたら、まず納豆になっているはずです。ふたをとると、煮豆の上にうっすらと白い納豆菌の膜がかかり、粘りが出ていたらでき上がり。大成功です。納豆になったら、保温を中止し、室内にしばらくそのまま置き、納豆特有の風味とうまみを熟成させます。これを「後発酵」と呼び、保温開始から後発酵まで、まる一日くらいかけるのがよいでしょう。
その11.上手な保存のしかた
よく発酵した納豆には、納豆菌が1グラム(大粒で2個くらい、小粒で4個くらい)当り10億個も生存しており、納豆菌が生産した酵素がたくさん蓄積されていますから、あたたかい所におくと、発酵がさらに進み、色も黒ずんできます。この状態になると、アンモニア臭も出てくるので味も落ちます。また、発酵が進み過ぎたり乾燥したりすると、タンパク質が分解されて生成されるチロシンという水に溶けにくい結晶が、納豆の表面に発生します。このチロシンはケシ粒くらいの大きさで、カどのように見えたりします。食べるとシャリシャリしていて、渋味がありますいずれにしても、チロシンが出てくるということは、納豆が古くなった証拠であり、これを防ぐためには、乾燥しないように、ポリフィルムなどでパックして冷蔵庫に入れておくとよいでしょう。このようにすれば、手作り納豆でも5日間くらいは保存できます。
◆納豆作りのコツ◆
その1、栄養は煮豆のタンパク質
納豆菌は繁殖するために必要な栄養源としてタンパク質を好みますが、とくに好きなのが煮豆に含まれているタンパク質で、この性質を利用して、納豆を作るわけです。ただし、塩分や酸っぱいものをきらうので、塩分が二パーセントをこすと納豆菌の生育はむずかしくなります。
その2、温度は40~42度
納豆菌がよろこんで繁殖するための適温は、摂氏40度から42度くらい。ちょっと熱めの風呂の温度がめやすといってよいでしょう。それだけ繁殖能力が高いことを意味します。だからといって、摂氏50度以上になると、ほとんど生育しません。反対に、摂氏30度以下では繁殖のスピードが半減し、10度以下になると繁殖がとまってしまいます。
その3、空気を十分に与える
納豆菌は、タンパク質などの有機物を燃焼させ、増殖するためのエネルギーを空気中の酸素から得ています。空気が十分に供給されないと、丈夫な糸を引く、うまい納豆にはなりません。
その4、湿度は八〇%以上
納豆菌は湿度の高い生活環境を好みます。じわっとした湿り気で、湿度でいうと80%以上が好適です。煮豆の表面が乾燥すると繁殖はストップし、納豆菌は分身ともいうべき胞子を作ります。胞子は熱や乾燥に強く、長く生き続ける生命力を備えています。
その5、清潔が大事
納豆菌はとてもきれい好きです。したがって、雑菌などがつかないよう、容器はもちろん環境も清潔にすることが大事です。容器類は熱湯消毒がよいでしょう。納豆はそのまま食べる食品ですから、雑菌にはくれぐれも注意しなければなりません。
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